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6つのエリアから解く!
イタリアの「地理とワイン」の関係

こんにちは! 土地と造り手を感じる食事に寄り添う美しいワインをお届けする【オットーネ】です。当サイトへお越しいただきありがとうございます。

こちらのブログでは、イタリアワインにより親しみ、よりおいしく楽しみたいという方、産地や品種のさまざまな情報、造り手やワインのエピソード、レストランや食卓での楽しみ方などについてお届けしています。

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さて今回は、イタリアの地理とワインの関係についてのお話。

「イタリアワインって産地も品種も銘柄もありすぎて、掴みどころがない……」
私がイタリアワインの仕事を始めて間もない頃にぶつかった壁です。

そんな時に当時の上司に教えてもらったのが、地形によってワインの特徴に傾向がある」ということです。

その導きのおかげで、バラバラの点にしか見えなかったワインを、面で捉えることができるようになり、さらには地形というベースの上に、ワインそれぞれの個性が成り立っているのだと理解できるようになりました。

ということで、今回はイタリアの地理、特に地形に注目し、大きく6つのエリアに分けてそれぞれワインの特徴を見ていきたいと思います。

目次

イタリア全体の地形の特徴

まずは皆さんご存知長靴型のイタリアを、全体的に俯瞰してみましょう。

北側国境にそびえるアルプス山脈から丘陵地帯、北部湖水地方へと続き、南下するとポー川流域の平野が広がります。
さらに突き出た半島部は地中海に囲まれ、その中央をアペニン山脈が背骨のように走っています。他の西洋諸国と比較して、山から海の距離が近いため、少し移動すれば地形も次々と変化していくというのが特徴です。さらに地中海には性質の異なる大きな島、シチリア島とサルデーニャ島が浮かんでいます。

気候にも目を向けてみると、北のアルプスが大陸側からの冷たい風を遮り、南はアフリカ側から温かい風が吹き、相まって半島をぐるりと囲む海が、各地の気候に大きな影響を与えています。またアペニン山脈を挟んで西と東では、地形も気候も全く異なります。

こうした地形がもたらすさまざまな要素が、イタリアワインの多様性のベースとなっているのです。

次の章からそれぞれの地形の特徴が、ワインの味わいにどのような影響をもたらしているかみていきましょう。

1)アルプス山麓

アルプスに近いヴァルテッリーナの段々畑。

内陸に位置する山岳・丘陵地域にあたります。気候は冷涼で、日照量は少なめ。主に南向きの傾斜を利用してブドウ栽培が行われていますが、傾斜の厳しい場所もあり畑仕事にも危険が伴います。またフランス、スイス、オーストリアと隣接していることから、ブドウ品種や食文化にもその影響が見られます。

ワインの傾向としては、果実味は控えめながら、豊富な酸によって引き締まった印象のものが多く見受けられます。
西側ピエモンテにはバローロ、バルバレスコといった高級産地、ロンバルディアのヴァルテッリーナなどでは、ネッビオーロを主体として力強さと複雑性を併せ持つ長熟向きのワインが生まれます。東側はトレンティーノ゠アルト・アディジェのキリッとした洗練された酸を持つ白ワインや、フリウリ゠ヴェネツィア・ジュリアのオレンジワインも存在感を放っています。

▶︎アルプス山麓の生産者
Boggione Claudio(ピエモンテ)
Oreste Stefano(ピエモンテ)
Mario Costa(ピエモンテ)
Alfio Mozzi(ロンバルディア)

2)北部湖水地方

イタリア最大の広さを誇るガルダ湖の南の畔に位置するルガーナのエリア。

ロンバルディアやヴェネトにまたがりコモやガルダなどの湖が点在する湖水地方。アルプスからの涼しい風と、太陽の熱で温められた湖の湿度によって、内陸に位置していながら地中海沿岸のような温暖な気候であることが特徴です。柑橘類やオリーヴなども栽培されています。

そのためブドウは比較的熟しやすく、香り高く果実味豊か、加えて酸やミネラルも感じられるワインを生み出しています。フランチャコルタ、ソアヴェ、ルガーナ、ヴァルポリチェッラなどが当てはまります。

▶︎北部湖水地方の生産者
Corte Sermana(ヴェネト)

3)ポー川流域

ポー川南の広大なワイン産地、オルトレポ・パヴェーゼ。

アルプス西側からロンバルディア、エミリア・ロマーニャ、ヴェネトの州境を通って東のアドリア海へと流れ出るポー川。その流域は広い平野が広がっています。

平野部では夏は蒸し暑く、冬は寒く霧が多く発生し、ブドウ栽培にとっては決して良い訳ではありませんが、豊かな水源と平野を生かし大量生産ができるため、かつては輸出や日常消費用のワインが大量に生産されていました。ランブルスコはその代表格ですが、近年は品質が向上し、この土地の食とよりマッチする、軽やかな飲み心地の果実味豊かなワインが作られるようになっています。

またこのエリアのDOPワインの多くは、平野からアペニン山脈へと続く丘陵地隊や渓谷に集中しており、ここでは大陸性気候の寒暖差と程よい風からなる、豊かなアロマと果実味を持つワインが生まれます。ロンバルディアのポー川南の三角地帯、オルトレポ・パヴェーゼの高品質スプマンテもその一つです。

▶︎ポー川流域の生産者
Travaglino(ロンバルディア)

4)ティレニア海側

トスカーナ内陸、キアンティのエリアにあるTenuta Parentiniの畑。なだらかな斜面を利用している。

アペニン山脈の西側の地域は、山からティレニア海へ向かって丘陵地帯や渓谷が広がり、山の風と海の風が通ることで適度な通気性が保たれています。また南に行くにつれ火山も。ブドウ栽培に適した個性ある土地が数多く存在します。

内陸では寒暖差があるため、香り高くしっかりとした骨格のある味わいになる傾向があります。トスカーナの、サンジョヴェーゼ主体の伝統的なキアンティや、国際的な品種を含めた自由なスタイルのスーパー・タスカンなどには特に力強く複雑な個性があります。
また、温暖な沿岸部では塩味を伴うフレッシュで心地よい白ワインが生まれます。

▶︎ティレニア海側の生産者
Tenuta Parentini(トスカーナ)

5)アドリア海側

Fattoria Nanniの畑から。マルケには高低差のある丘が連なる。

海と山の距離が近く、傾斜のある土地が続きます。海からの温かい風が山にぶつかることで、温かい空気が溜まりやすく、通年を通して温暖な気候となります。

そのため果実が熟しやすく、ワインはアルコール度が高めで、厚みのあるふくよかな佇まいに。マルケでは、生き生きとした酸を持ち長期熟成のポテンシャルも備えるヴェルディッキオが有名です。赤ワインはアブルッツォの果実味たっぷりのモンテプルチャーノや、プーリアの広大な大地で育つパワフルで濃厚なネグロ・アマーロなどあります。

▶︎アドリア海側の生産者
Fattoria Nanni(マルケ)

6)島しょ部

シチリアのシンボル、エトナ山。(Wolfgang HöfleによるPixabayからの画像)

シチリアとサルデーニャ、二つの大きな島は異なる特徴を持っています。

シチリアには標高差が大きくなだらかな丘陵、肥沃な平野、そして活火山があり、さまざまなテロワールが混在しています。アフリカからの風を受け特に南は乾燥しています。冬も比較的温暖。強い日照と涼しい夜間の温度差がブドウの成熟を促し、ワインに豊かな風味と複雑さをもたらします。特にエトナ山周辺の火山性土壌は、品質の高いワインを生み出す可能性に満ちた土地です。

サルデーニャは、丘陵地と山地が8割を占めている。内陸部は標高が高く、冬は寒い。沿岸部の夏は暑く乾燥していますが、海風がそれを和らげています。ブドウ栽培に適した斜面も多い。カノナウやヴェルメンティーノなどの在来品種が特徴で、特に強く、豊かな風味を持つ赤ワインや、爽やかな酸味と果実味が調和した白ワインが評価されています。

まとめ

地形をもとにイタリアを大きく6つのエリアに分けて、それぞれの地理とワインの特徴を見てきました。

このように大枠のベースを捉えることで、イタリアワインの混沌とした難しさが幾分和らぎ、ワインのイメージを掴む助けになるのではないでしょうか。

その上で、変化に富んだテロワールや、多種多様な品種、造り手の哲学、歴史・文化的背景などが重なり、一本のワインの個性が作り上げられていくという段階的なイメージを持つことで、ワインを深く読み解くことにつながるのではないかと思います。

イタリアの地図を眺めて飲んでみるのも楽しいものですね! それではまたお目にかかりましょう。

 

参考文献:
『プロフェッショナルのためのイタリアワインマニュアル イタリアワイン 2019年版』宮嶋勲監修/ワイン王国/2019
『イタリアワインと料理の強化書』日本ソムリエ協会&日本イタリア料理協会/一般社団法人日本ソムリエ協会/2019
『イタリア式 ワインのABC』イタリアソムリエ財団(松山恭子訳)/イカロス出版/2020
『ワインの授業 イタリア編』杉山明日香/リトルモア/2018
『イタリア好き vol.47 最強!イタリアワイン』イタリア好き委員会/2021

 

文:宮丸明香