オットーネ通信（第10回）天にも昇る心地「聖なるワイン」ヴィン・サント
いつもオットーネのワインをお取り扱い頂きありがとうございます。
クリスマスプレゼント用にワインをお探しの方もいらっしゃるでしょうか？ 私も「クリスマスっぽいエチケットのワインが欲しいなぁ～」 なんて思いながら、軽い気持ちで手にしたのがこちら。
Tenuta Parentini（テヌータ・パレンティーニ）社
Vin santo Bianco dell'empolese D.O.C.（ヴィン・サント）
ところが、、、試しに飲んでみようと栓を抜いた瞬間、 思いがけず、目を閉じて立ち尽くしてしまいました。
甘く芳醇な香りが、なめらかに、体へと溶けてゆく…… 天にも昇るような心地に、我を忘れてしまったのでした。
神秘のヴェールをまとうヴィン・サント
「聖なるワイン」 そんな意味を持つヴィン・サントはトスカーナの特徴的なデザートワインです。陰干ししたブドウを、小さな樽で醗酵、長期熟成して造られるのですが、この製法自体は紀元前にギリシアからイタリアへワイン造りがもたらされた当時と同じだと言われており、キリスト教の普及とともに各地へ伝わったと考えられています。（ヴェネトには同じ製法のヴィーノ・サントと呼ばれるものがあります。）
名前の由来についてははっきりとしておらず、さまざまな説があります。 例えば、ギリシャのサントリーニ島で造られていた同名のワインが起源だから、 ブドウを聖週間の間に圧搾し、発酵を開始するから、キリスト教の儀式に使用されるワインだから、、、などと調べるほど色々出てきます。
また、イタリアのレストランのワインリストには、 赤、白、泡と並んで「瞑想ワイン」というカテゴリが記されていることがありますが、ヴィン・サントは他のデザートワインと共にそこに載っていることがあるのだとか。
謎めいた魅力を持つヴィン・サントは、「ちょっと日常から離れたい」 そんなときに、抜群の威力を発揮してくれるワインなのです。
受け継がれ、生まれ変わったパレンティーニのヴィン・サント
パレンティーニでは伝統に則した製法で祖父の代から伝えられてきました。 現当主リッカルドさんは、ヴィン・サントについてこう表現しています。「ほかのどんな種類のワインにも、この感動を与えることはできない」と。
使用するブドウは9月中旬に収穫したトレッビアーノ・トスカーノ種。
父親からは「採るのはピンク色のものだけ！」と教え込まれたそうです。 よく熟していて、糖度が高いからです。収穫したブドウは、陰干し用の棚の上で3ヵ月ほど乾燥させた上で圧搾。その後果汁はカラテッリと呼ばれる樽（30〜100リットルのさまざまなサイズ）に入れられ、3年間発酵、熟成させてできあがります。
実はパレンティーニのヴィン・サント、以前は今より辛めの味わいだったそうです。 もっと甘みを引き出したい――。 そう考えたリッカルドさんは、2000年代初頭から、乾燥の期間をクリスマス頃の12月下旬まで延長。さらに糖度を高め、味わいに奥深さを与えることに成功したのです。
美しい琥珀色に、あんずのような成熟したフルーツの香りと味。 実に上品な仕上がりで、まさにパレンティーニの誇る傑作です。
まずはヴィン・サントのみを、心ゆくまで。 そして我に戻ったら（笑）、 トスカーナの定番の楽しみ方もお試しください。 カントゥッチーニを浸したり、他の果実のドライスイーツと併せてどうぞ。
味わう人々の感動の表情が励みになる
例年なら間もなく来るクリスマスの時期に乾燥を終えるはずですが、 今年は残念ながら生産を1年間スキップすることにしたそうです。 コロナの影響は大きく、トスカーナのレストランやワインバーは長期閉鎖、需要が見込めないというのが現状です。
それでも、リッカルドさんはこう話してくれました。 「自分の造ったヴィン・サントを味わった人の感嘆の眼差しや表情を見ると、このために費やしてきた努力が報われます」と。
皆さんの声は生産者の方々の、励み、希望になります。ご賞味いただいた際には、ぜひ感想をお寄せください！ 来年は世の中が穏やかになり、生産が再開できるよう祈ります。 皆さんにもよいクリスマスが訪れますように。Buon Natale！
（文：宮丸明香）
ワイナリー：テヌータ・パレンティーニ
原産：トスカーナ州／フィレンツェ県
品種：トレッビアーノ・トスカーノ種100％
内容量：375ml
アルコール度数：14.5%
タイプ：甘口デザートワイン
参考上代：3,300円
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