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オットーネ通信(第31回)
オルトレポー・パヴェーゼの魅力 Gambero Rossoセミナーレポート

こんにちは!イタリア現地で愛されるナチュラル&ピュアなワインをお届けする【オットーネ】です。当サイトへお越しいただきありがとうございます!

10月に行われたガンベロロッソ主催のトレ・ビッキエーリ試飲会にてオルトレポー・パヴェーゼをテーマに上級者向けセミナーが開かれました。
セミナーには弊社取引ワイナリーTravaglino(トラヴァリーノ)のワインも登場するということで、私も参加してまいりました。今回はこのセミナーのレポートをお届けします。

お話は、オルトレポー・パヴェーゼ ワイン保護協会のカルロ・ヴェロネーゼさん、通訳・解説はワインジャーナリストの宮嶋勲さん。痛快なトークとともに、オルトレポーの魅力をたっぷり堪能してきました~。

読めばオルトレポーのおもしろさを発見できるはず。どうぞご覧ください。

1) オルトレポー・パヴェーゼとはどんな産地か?

Consorzio Tutela Vini Oltrepò Paveseより

まずは産地の概要から。

ミラノから南へ約60㎞、ポー川を越えると三角形の土地が広がっています。ここには4つの渓谷からなるなだらかな丘陵地帯が続き、さらに南へ向かうと標高1700mのアペニン山脈がそびえ、ピエモンテ州、エミリア・ロマーニャ州、リグーリアに隣接しています。この地がオルトレポー・パヴェーゼです。

イタリアの中でもとりわけ広いワイン生産地で、栽培面積は13,000ha、原産地呼称の栽培面積でも国内第3位を誇っています。年間7500万本のワインを生産、ロンバルディア州内のワインの60%以上がこのエリアのものです。エリア内の農園の数は1700にのぼります。

Consorzio Tutela Vini Oltrepò Paveseより

歴史も非常に古く、ワイン生産は2000年前にはすでに行われていました。優れたワイン産地であることは昔から有名で、ピエモンテなど他の地域にブドウを供給したり、ミラノのテーブルワインを生産していました。そのため量産を求められた時代がありましたが、近年は品質向上に力を入れており、DOC以上に認定されているワインが7つあります。

地理的なポイントとしては、ワイン生産に理想的とされる緯度45度線沿いに位置していること(ピエモンテ、ボルドー、ブルゴーニュ、オレゴンなどもこのライン沿いにあります)、そしてリグーリアからの地中海性気候と、ポー平原の大陸性気候のつなぎ目にあたる土地であること。渓谷に沿った丘陵地帯ということで、多様な日照条件や土壌が、表情豊かでバラエティに富んだワインを生み出しています。

2) 品種について

Tenuta Travaglinoより

かつてこの地に存在していた土着のブドウ品種は、なんと225種にものぼったそうです(1884年の時点)。
今日では、絶えず受け継がれたものと再発見されたものを合わせて、12種が栽培されています。4つの渓谷からなる丘陵地帯は、テロワールに多様性を与え、結果的に赤白問わずさまざまな品種が育ち幅広い種類のワインを生み出しています。

特に知られているのはピノ・ネーロ(Pinot nero)、クロアティーナ(Croatina)、バルベーラ(Barbera)、リースリング(Riesling)。
他にもウーヴァ・ラーラ(Uva Rara)、ウゲッタ(Ughetta)(別名ヴェスポリーナ、Vespolina)、ピノ・ビアンコ(Pinot Bianco)、ピノ・グリージョ(Pinot Grigio)コルテーゼ・ビアンコ(Cortese Bianco)、モスカート(Moscato)、マルヴァージア(Malvasia)、ミュラー・トゥルガウ(Müller-Thurgau)といった品種が栽培されています。

Tenuta Travaglinoより

最も重要な品種であるピノ・ネーロから造られるのは、Metodo Classico(メトド・クラッシコ。瓶内二次発酵のスパークリングワイン)、Cruasé(クルアゼ。瓶内二次発酵のロゼスパークリングワイン)、Rosso da invecchiamento(熟成赤ワイン)という、3つのバリエーションのワインです。

ほとんどの生産者が、このピノ・ネーロの瓶内二次発酵と赤ワイン、そしてリースリングの白を生産しています。

ちなみにピノ・ネーロがオルトレポーの地にもたらされたのは、1850年のこと。ヴィスタリーノのアウグスト・ジョルジ伯爵がフランスから輸入して植樹したのが始まりだそうです。また、リースリングはオルトレポーの地がオーストリア支配の時代に入ってきたと考えられている……など諸説あります。

3) ワインの特徴&テイスティングコメント

宮嶋さん曰く、「オルトレポーのワインは、全体的に、力強さとスケールの大きさを感じさせる」とのこと。酸がしっかりとあり、味わい深く、ボディがしっかりとしていながら、食事と合わせやすいことが特徴です。
オルトレポーのワイナリーを巡ると、その多くは土地の高級サラミと合わせてテイスティングさせてくれるのだとか。

ここからテイスティング♪ 全10種類を試飲しました。

左から
1. Ortrenero/Oltrepò Pavese DOCG Metodo Classico Pinot Nero/Brut/s.a.
2. Bruno Verdi/Oltrepò Pavese DOCG Metodo Classico Pinot Nero/Brut Vergonberra/2018
3. Giorgi Wines/Oltrepò Pavese DOCG Metodo Classico Pinot Nero/Brut 1870/2018
4. Tenuta Travaglino/Oltrepò Pavese DOCG Metodo Classico Pinot Nero/Rosè Monteceresino/2016 弊社取り扱い。販売中ヴィンテージは2013年です。
5. Cà di Frara/Oltrepò Pavese DOC Riesling Superiore/2020
6. Isimbarda/Oltrepò Pavese DOC Riesling/Vigna Martina Le Fleur/2020
7. Losito & Guarini/Pinot Nero dell’Oltrepò Pavese DOC/C’era una Volta/2021
8. La piotta/Pinot Nero dell’Oltrepò Pavese DOC/Piotta/2020
9. Torti Eleganza del Vino/Pinot Nero dell’Oltrepò Pavese DOC/2019
10. Tenuta Mazzolino/Pinot Nero dell’Oltrepò Pavese DOC/Noir/2018

ピノ・ネーロから生まれるバリエーションの豊かさのなんと面白いこと! メトド・クラッシコの白&ロゼ、赤のスティルという区別の先にも、造り手の醸造スタイルなどからはっきりとワイン個性が現れています。
ブルゴーニュのピノ・ノワールのような繊細なエレガントさと比較すると、確かにオルトレポーのワインは全体的にインパクトや質感がきちんと感じられるものが多い印象がありました。

リースリングもこちらのセミナーでの試飲のほか、特設ブースで他社のものを試させていただきましたが、これも変化に富んでいてとても驚きました。

4) オルトレポーの現在とこれから

Consorzio Tutela Vini Oltrepò Paveseより

これまでのオルトレポーの悩み……それは地域全体としての明確なアイデンティティを打ち出せずにいたこと。
ポテンシャルの高さゆえ、多くの品種が栽培され、どれもそれなりにおいしくできる。土壌の性質も変化に富み、生産者も多くスタイルもさまざま。。。
こうした状況を打開するために、近年はピノ・ネーロという品種を核とすることで、地域としてのブランディングを試みています。

近頃の消費動向のポイントは2点。

一つ目はクルアゼ(ロゼスプマンテ)がポピュラーになりつつあり、需要が次第に高まっていること。(イタリアではロゼの人気が出るまで時間を要したらしいのですが)

二つ目は、若いうちに飲める赤のスティルワイン生産量が増加していること。なんでもメトド・クラッシコの6倍にもなるそうです。ブランドとしては高級なメトド・クラッシコを打ち出しつつも、経営を支える主力はリーズナブルで親しみやすい赤ワインということですね。

▲トラヴァリーノからはクルアゼのRosè Monteceresinoでした。辛口で凝縮感のある旨みがいいのですよ~

また、近年の地球温暖化対策として、干ばつに強いクローンを植えたり、標高の高い位置に畑を移動したりと、土地のワイン生産の文化を未来につなげていくための取り組みが地域全体でなされています。

宮嶋さんは最後に「オルトレポーの造り手は、自分たちの魅力をあまり大げさに主張しない。控えめだが、実は非常においしいワインを造っている。その魅力が日本でももっと認知されていいと思う」と締めくくりました。

いかがでしたか? 産地としてのポテンシャル、規模感、多様な土壌と品種、そして造り手の哲学が生むバラエティに富んだワイン……ワクワクさせてくれる魅力に溢れているオルトレポー・パヴェーゼ。

オルトレポーのワインを日本へ輸入している会社はまだあまり多くありませんが、ぜひ目を向けていただきたいエリアの一つと言えます。オルトレポーの今後に注目です!

(文:宮丸明香)

参考:オルトレポー・パヴェーゼ ワイン保護コンソーシアムのサイト(日本語あり)
https://jp.consorziovinioltrepo.it/

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