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オットーネ通信(第29回)
土地を探る ~ヴェネト州・ロンバルディア州 ルガーナ編~

7月後半ともなると、夏休み気分が沸いてきますね。いまだ気楽に、開放的に旅のできる状況ではありませんが、それでもこの季節には日常から離れた場所の空気を吸いたくなります。

7月31日開催のOTTONEの試飲会では、「夏に行ってみたいワイン産地」をテーマに開催しました。ここでご紹介したのがコルテ・セルマーナのあるDOCルガーナのエリアです。

DOCルガーナのワインが生産されるのは、イタリア最大の湖・ガルダ湖の南側。ロンバルディア州ブレーシャ県とヴェネト州ヴェローナ県にまたがる一帯。澄みわたる湖と北にそびえる山々の景観がとても美しい場所です。

今回はその中でも、コルテ・セルマーナのワイン造りに深く影響を受けている二つの地区を中心に、ルガーナ界隈の歴史や文化、気候風土を感じながら、ワインと共に脳内トリップしたいと思います。

風光明媚なガルダ湖南の畔で生まれるDOCルガーナワイン

▲ガルダ湖とコルテ・セルマーナの位置

ヴェローナから西へ40分程の場所にあるガルダ湖。北部は細長く大部分は山々に囲まれた渓谷で(最北端はトレンティーノ=アルト・アディジェ州に属する)、南部は幅が広くなり、湖を囲むように丘が連なっています。北部に位置していますが、柑橘類やオリーヴの栽培が行われるほど温暖な気候であることが特徴です。

地域の産業は、のちほど詳しくお話するワイン生産のほかには観光業が盛んで、北イタリアの中でも有数のリゾート地として人気があります。火山性硫黄がもたらす温泉や、考古学的・歴史的価値のある建造物などなど、見どころもたくさん。バカンスシーズンになると、国内外から多くの人が訪れています。

この地のワイン造りの歴史は長く、古代ローマ時代にさかのぼると言われています。ルガーナというエリアの名は、中世のラテン語「lacuslucanus(森の中の湖)」という言葉に由来すると言われており、かつてこの場所が木の生い茂る場所であったことを物語っています。

ルガーナワインはトレッビアーノの土着品種である「トゥルビアーナ」(地元での呼び名。かつてはトレッビアーノ・ディ・ルガーナと呼ばれていた)を主要品種とする白ワインです。味わいは白い花や熟した果実の香り、骨格と長期熟成に耐えるポテンシャルを持ち、国際的にも評価されています。1967年原産地呼称に認定されました。

ルガーナは5つの村から構成されていて、4つはロンバルディア州に(デセンツァーノ、シルミオーネ、ポッツォレンゴ、ロナート)1つはヴェネト州に(ペスキエーラ・デル・ガルダ)あります。

古くからの交易の要所であり、恵まれた保養地だった州境の地

ここからはコルテ・セルマーナに深く関係する二つの地区、ペスキエーラ・デル・ガルダ(ワイナリーの所在地で、ルガーナの生産地のうち唯一ヴェネト州に属する地区)と、シルミオーネ(ワイナリーに隣接するロンバルディア州の地区)について詳しく見ていきます。

歴史を紐解くと、それぞれの土地の特徴がよくわかります。

▲ペスキエーラ・デル・ガルダ(By Arne Müseler / www.arne-mueseler.com, CC BY-SA 3.0 de, Link より)

ヴェネト側のペスキエーラ・デル・ガルダは、原始時代の杭上居住文明の遺跡が証明するように、紀元前5000年頃から既に人が住んでいました。古代ローマ時代には交易の重要拠点となります。というのも、ガルダ湖から流れるミンチョ川と南チロル方面からアドリア海へと流れるアーディジェ川の接続地点であることや、古代ローマの重要な幹線道路であったガリア執政官街道とルガーナの森に近かったためです。
中世のロンバルド族の支配下では修道院の一部となり、その後ヴェローナ司教の管轄区域(司教区)に、次いでヴェローナの領主スカーラ家によって城塞が築かれました。16世紀にはヴェネト共和国により新たな砦が設けられましたが、フランス革命やイタリア統一運動の時代には歴史に翻弄され浮き沈みに苦しみ、フランス衛星国への編入やオーストリア-ロシア軍などの侵攻にあい、イタリアに戻ったのは1859年のことでした。

▲シルミオーネにある古代ローマ時代の邸宅 (https://www.consorziolugana.it/territorio より)

一方のロンバルディア側にあり湖に突出した半島を有するシルミオーネは、古代ローマ時代から貴族の保養地とされていました。考古学的に価値のある出土品も見つかっています。かつては「セルミオーネ」と呼ばれていて、その名の由来には二つの説があり、一つは「尾、引きずること」を意味するギリシャ語の“syrma”とする説、もう一つは「水上のホテル」を意味するガリア語の“sirm-ona”を語源とする説です。いずれもこの土地の地形や役どころを彷彿させますね。
東ローマ帝国時代のロンバルド族支配下では「スタツィオーネ・ポスタ」と呼ばれる馬の休憩地点にもなっていたそうです。12世紀にはヴェローナの一部となり、城塞都市へと姿を変えました。15世紀初めにヴェネツィア共和国に征服され、19世紀のイタリア統一運動後はブレシア県とされました。

トゥルビアーナの特性を生かし育てる、
穏やかな気候と氷堆石土壌

ルガーナを特徴づける重要な要素として押さえておきたいのが、暖かく穏やかなミクロクリマ(微気候)と氷河期由来のモレーンと呼ばれる氷堆石土壌です。

まず気候について。ガルダ湖は北部の内陸に位置していますが、先述の通り地中海沿岸に似た温暖な気候です。そのわけは、アルプスからの冷たい風がガルダ湖の湿気によって緩和されるため。湖の周辺にはいつも穏やかな風が吹いています。ただ突然の雨や気温変化が起こることもしばしば。そして夏の終わりの熟成最終段階には昼夜の寒暖差が大きくなり、これがワインの味わいに非常にいい影響をもたらしています。
コルテ・セルマーナの当主フィリッポさんは、「ルガーナのエリアは、トゥルビアーナの特性を十分に生かす、完璧な気候のゆりかごを持っている」とお話してくれました。

次に土壌について。最も多いのが、氷河期由来の氷堆石(モレーン)と呼ばれる粘土質で最大で70%を占めます。そのほかシルト(砂より小さく粘土より大きい粒)が最大で40%、石灰質が最大で40%含まれます。全体的に重くしっかりとした土壌となるため、日照りの多いときは、土は固くなり、雨のあとは柔らかく泥のようになります。土の中に有機物が少なく、酸素を供給しにくいというのが難点です。よってブドウを健全に生育するためには、土壌をいかに扱うかが、最も重要(根本的かつ決定的)なポイントだと言えます。

コルテ・セルマーナでは基本的に有機農法を実践していますが、こうした気候や土壌の特性に対し、湿度による病害が心配な時は必要に応じて最低限のラーメ(銅)などを散布し、土壌を肥沃にするために窒素の豊富な花やマメ科の植物などを植えるなどしながら、ブドウの栽培に向き合っています。

湖で親しまれる多彩な魚料理とともに

こうした環境の中で生まれたフルーティーで瑞々しいルガーナのワインに合わせる郷土料理は、やはり湖の魚を合わせたものがポピュラーです。
例えば
・Bigoli con le Sarde:ガルダ湖で獲れる新鮮な魚とヴェネトを代表するパスタ ビーゴリの組み合わせ。
・Coregone lavarello:ホワイトフィッシュと呼ばれるサケ科の白身魚。グリルやバーベキューに向いています。
・Carpaccio di trota:マスのカルパッチョ。湖に多く生息するマスの風味を楽しめます。
・Luccio alla Gardesana:カワカマスのソフトポレンタ添え。
・Zuppa di pesce di lago:湖魚のスープ
ほかには、アスパラガスやグリーンピースなどの野菜類や、ゴルゴンゾーラとクルミのリゾットなどとも合わせて楽しまれています。

さらに、フルーティーでクセのない味わいは、繊細な味わいの和食とも相性がよくおすすめです。

いかがでしたか?

ルガーナのエリアとワインを、「行ってみたい!」という視点からさまざまな角度でアプローチしてみました。この夏はルガーナの入ったグラス片手に、ガルダ湖の畔へと旅した気分になっていただければうれしいです。そしていつかイタリアを旅できる日が来たら訪れてみてほしいなと思います。

(文:宮丸明香)

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Corte Sermana(コルテ・セルマーナ)

オットーネ通信(第22回)ガルダ湖の美しさと祖父への思いが生んだルガーナワイン

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