オットーネ通信(第33回)
ミサ先生のゆるふわチーズ講座レポート
こんにちは!イタリア現地で愛されるナチュラル&ピュアなワインをお届けする【オットーネ】です。当サイトへお越しいただきありがとうございます!
オットーネのブログでは、イタリアワインにより親しみ、よりおいしく楽しみたいという方へ、産地や品種のさまざまな情報、造り手やワインのエピソード、レストランや食卓での楽しみ方などについてお届けしています。
今回は、2月12日にエノパニーノイケブクロ(以下エノパニ)にて開催された【ミサ先生のチーズ講座】参加レポートをお送りします。
ワインのよき相棒であるチーズ。私も大~好きなのですが、いかんせん食べるばかりで、知識はちょろっとしか持ち合わせておらず。。。
そんな私のようなチーズ初心者でも、和やかに和気あいあいと、チーズの面白くて奥深い世界をのぞける会です。
チーズ大好き!色々食べ比べしてみたい!チーズのプロにあれこれ聞いてみたい!という方にぴったりです。
今回のレポートでは、会の様子をお伝えするとともに、ミサ先生に教えてもらったチーズの豆知識をシェアしたいと思います♪
目次
ミサ先生のチーズ講座はこんな会
講師のミサ先生は、エノパニのチーズ担当でC.P.A(チーズプロフェッショナル)として活躍されています。
このイベントでは、イタリア各地のチーズが登場し、2時間たっぷりかけて味わいます。それぞれのチーズの文化的背景や製造秘話などを聞きながら、ワインと一緒につまんだり、「ちょい足しアレンジ」を実体験させてもらえたり。一切れのチーズをさまざまな角度から味わい楽しむことができます。
チーズの味わい方や楽しみ方にポイントなどあるのか?と、ミサ先生に伺ってみると、
「例えば審査や試験などでは、チーズの色や形、香り、食感、余韻、熟成の具合などの項目を見ていきます。ワインのテイスティングともよく似ていますね。ただ初めのうちはそういった難しいことにとらわれず、まず自分がどんなものが好きかを見つけてみてください」
と、ほっこりとしたお答えが返ってきました。
そんな気負わない雰囲気のなか、チーズのエピソードに耳を傾けながらじっくりと時間をかけて味わうことで、それぞれのチーズの魅力を発見し、自分の好みにも気付くことができる、そんな楽しく贅沢な時間が過ごせるのが、このイベントの醍醐味です。
イタリアチーズ豆知識
まずは少しだけイタリアのチーズの歴史やチーズ事情に触れておきましょう。
チーズは紀元前4000年頃、メソポタミアの地域で生まれたとされています。イタリアへは、紀元前1000年頃にギリシャ文明を持つ古代エトルリア人によって、ロンバルディア地方に伝えられました。イタリアは西ヨーロッパで初めてチーズが伝来した土地でもあるんですって。
しばらくするとスイスから質の高いチーズを取り寄せて、それらをもとにイタリアの土地に合わせた形で改良が重ねられていきます。
北部では、牛乳を使ったパルミジャーノ・レッジャーノやゴルゴンゾーラなどの原型が、またポー川流域で水牛乳から作るモッツァレラが生まれました。南部では、岩場が多く耕地が少ないため、山羊や羊の乳を主体としたチーズ作りが行われてきました。
そして現在、イタリアにあるチーズは少なく見ても500種類以上あるのだとか…なかには数千種類という記述もあり!?
ちなみにお隣のフランスでは、食事のデザート代わりにチーズを食べることが多くありますが、イタリアでは料理に頻用されているのが特徴です。確かに、前菜からパスタ、メイン、ドルチェなど、たくさんのメニューであらゆる種類のチーズが使われていますね。
長い歴史を経てイタリアの人々の食生活に深く根付いた、大切な食材なのです。
今回いただいたチーズ&ちょい足しアレンジ
ここからは今回いただいたチーズと「ちょい足しアレンジ」についてご紹介!
1.ネーヴェ・デル・グラッパ
しっとり緻密でマイルドな万能選手
(原材料 : 生乳、食塩/白カビタイプ/ヴェネト州)
自然の多く残るモンテ・グラッパ(グラッパ山)の小さな工房で作られているチーズ。冬になると雪で山頂が真っ白になる様子と、柔らかな白カビに覆われたチーズの姿が似ていることからこの名が付けられた。
生地は熟度によりクリーム色から麦わら色へ。高密で弾力がある。香りはフレッシュで、ミルクの優しいアロマが楽しめる。ほかのカビ系チーズに比べて癖が少なく、デリケートで食べやすい。後味にはアロマチックなニュアンスが現れます。
★ちょい足しアレンジ:生ハム
⇒生ハムの塩味とチーズのマイルドさが相まって、おいしさと食べ応えUP!
2.ペコリーノ・サルド・マトゥーロDOP
ほどよいペコリーノの香りと塩味がいい感じ
(原材料: 羊乳、食塩/ハードタイプ/サルデーニャ島)
⽺乳の宝庫サルデーニャ島の伝統的なチーズ。強いクセがなく、⽜乳よりもコクがあり、ミルクの⽢さが感じられるので⼝の中で余韻をより⻑く楽しめる。”マトゥーロ”は熟成期間の⻑いタイプのこと。2カ月⽉以上の熟成で旨味が増して塩分のバランスも良く馴染んでいる。そのままテーブルチーズに◎。
★ちょい足しアレンジ:ハチミツ&アマレーナチェリー
⇒凝縮感のある甘み、双方のコク、塩味の黄金バランスに手が止まりませんでした~!
3.ストラキトゥン DOP
もっちり食感と穏やかなブルーの風味がクセになる
(原材料: 生乳、食塩/青カビタイプ/ロンバルディア州)
タレッジョ渓谷で生まれ、ゴルゴンゾーラの父とも言われるブルーチーズ。ベルガモ方言で「丸いストラッキーノ」の意味で、ルーツもストラッキーノから派生したと言われている。生産量が減り一時途絶えてたが、DOP認定により息を吹き返した希少なチーズ。
熟成中に穴を開けて青かびの繁殖を促進し、最低75日間熟成。ウォッシュ特有の風味はあまりなく、ヘーゼルナッツや麦わらの香りに、塩味も含め全体的にマイルドな味わい。
★ちょい足しアレンジ:ドライデーツ(ナツメヤシ)
⇒デーツの餡子のような濃厚な甘みと食感が、青カビ独特の辛みをやさしく感じさせてくれました。
4.ヴァルテッリーナカゼーラ
素朴ながらも深いミルクのコクと味わいが魅力
(原材料: 生乳、食塩/ハードタイプ/ロンバルディア州)
ロンバルディア州の山岳地帯であるソンドリオでしか作られない特別なチーズで、ヴァルテッリーナ渓谷のチーズと呼ばれている。ワインより牛乳を多く生産する土地として知られる広大な野原で放牧された牛のミルクのみを使用した、高品質で味わい深いチーズ。
薄く硬い外皮、程よい弾力ある中身、熟成期間や製造時期によって色は白から麦色と変化する。まろやかさの中にドライフルーツのようなアロマが感じられる。
★ちょい足しアレンジ:クルミ
⇒ヴァルテッリーナの赤ワインも添えれば、芳ばしく食べ応えのある、粋な小腹満たしに。
5.ブリガンテ・アル・ぺーぺ
胡椒がいいアクセント、こなれた見た目と味わいのチーズ
(原材料: 羊乳、食塩、黒胡椒/セミハードタイプ/サルデーニャ島)
羊達はカラスノエンドウ(ソラマメ属)を食べて育つため、ミルクの香りも特徴的。熟成は20~25日間。黒こしょうの香りが口に広がり、次第にペコリーノのぴりっとした味わいも感じられる。白ワインや軽めの赤ワイン、辛口洋梨のマスタード、鶏肉ダシのブロード、新鮮なソラマメと相性抜群です。
★ちょい足しアレンジ:オリーヴオイル
⇒オリーヴオイルの青い香りと、チーズのソラマメの爽やかな風味で、食欲のそそられる組み合わせ。
6.クルティン 黒トリュフ入り
上品な黒トリュフとミルクの香りの虜
(原材料: 生乳、山羊乳、食塩、黒トリュフ、黒トリュフフレーバー/セミハードタイプ/ピエモンテ州)
黒トリュフをこまかく刻んだものと、牛と山羊のミルクで作る贅沢なチーズ。中身はくずれるようなもろい組織で、山羊乳由来の軽い酸味に素朴さがあるが、後から感じられる芳醇なトリュフの香りは魅惑的。このあたりの地域では牛乳の中に山羊乳をよく混ぜるのだが、どちらのミルクの良さも引き出されている。ポイントとなるのが擬灰岩(火山岩)でできた理想的なカーブでの熟成、ここでトリュフの香りがチーズの中に閉じ込められていく。
薄くスライスしてワインと共に、パスタや卵料理の仕上げに使えばグレードアップ間違いなし。
合わせたワイン
ワインはこちらをチョイスしていただきました。
●前半1~3に
アンカント(ロゼ)(マリオ・コスタ社)
ネッビオーロのチャーミングでフレッシュな果実味に、穏やかなタンニン、アロマティックな余韻。
前半に登場した比較的穏やかな風味のチーズとよくマッチしており、味わいを邪魔せず、やさしく寄り添ってくれました。
●後半4~6に
ヴァルテッリーナ・スーペリオーレ サセッラ“グリーゾネ”(赤)(アルフィオ・モッツィ社)
ヴァルテッリーナのキアヴェンナスカ(ネッビオーロ)が生む、芳醇なアロマ、まろやかな酸と緻密なタンニンが上質な印象。
ヴァルテッリーナの滋味深さはもちろん、胡椒やトリュフといった複雑な個性とのバランスもよかったです。
まとめ チーズの魅力は、おいしさの背景にあるロマン
最後にミサ先生に、チーズの魅力についてお伺いしました。
「何千年も続いてきた長い歴史があり、それぞれのチーズにストーリーがあること。動物たちの乳という素材だけで、さまざまな味わいを生み出すこと。また非常に栄養価の高い優れた食材であること。人々の歴史と知恵が詰まっていることに思いを馳せながらいただくと、なんだかロマンを感じませんか? そんなところがとても魅力的だと思います」
今回気軽に参加させていただきましたが、「ただ、おいしい」というその背景には、壮大な時間や自然の風景、動物たちとの営み、手仕事の誇りのようなものも随所に感じられ、チーズに対する愛おしさが湧いてきました。チーズの世界も、おもしろい! ミサ先生ありがとうございました。
(取材・文:宮丸明香)