オットーネ通信(第27回・番外編)
アルフィオ・モッツィ ヴァルテッリーナでフィーキ・ディンディアと共生する畑(日本語訳)
こんにちは!
イタリア現地で愛されるナチュラル&ピュアなワインをお届けする【オットーネ】です。当サイトへお越しいただきありがとうございます!
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数か月前になりますが、イタリアのWEBメディア【Parole di Vino】にて、ヴァルテッリーナの造り手Alfio Mozzi(アルフィオ・モッツィ)が取り上げられました。
ヴァルテッリーナの土地の特異性、アルフィオさんのこと、ワインのことについてとてもわかりやすく魅力を伝えている記事だったので、アルフィオさんと記者のエンツォさんの同意をいただいたので、こちらに日本語訳を掲載します♪ どうぞ!
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アルフィオ・ モッツィ
ヴァルテッリーナでフィーキ・ディンディア*と共生する畑
*フィーキ・ディンディア:ウチワサボテン
文:エンツォ・パトロネッリ / 2021.12.16
(原文・画像元)https://paroledivino.com/2021/12/alfio-mozzi-la-vigna-con-i-fichi-dindia-in-valtellina.html#comments
▲斜面にあるアルフィオ・モッツィの畑
ここはヴァルテッリーナだ。その畑は貴重なサッセッラ地区のサブゾーンで、ソンドリオ県の郊外にあるカスティリオーネ・アンデヴェンノの町の中にあり、地元ではグリーゾニとして知られる地域の中にある。
1600年代に既にここで生産されるワインは高い評価を受けていた。
外交官でスイスの地理学者であった、ヨハン・グラー・フォン・ヴァイネッチ(Johann Guler Von Weinech )はヴァルテッリーナについて、次のように書き残している。
「陽が燦々と降り注ぐ、そびえたつ岩から成る丘陵地なのだが、ワインにとっては実り多い土地で、そこはグリーゾニといわれている ―そこは全ての渓谷の中で、最高の、とても美味しいワインを生み出す」と。
▲このロープーウエーは、この並外れたワイン醸造において必須である。
私は、春の陽光が注ぐ素晴らしい日に、青い空と春のぬくもりと共にワイナリーに到着した。
アルフィオ・モッツィは、彼が畑と呼んでいる、上方向に険しい斜面となっている土地の上に立って、既に私を待っていた。
アルフィオはこの地に生まれ、子供の頃から、ワイナリーや畑で大人たちを手伝って、崖と段々畑の間を駆け回っているうちに、自然と空気のようにワインに親しむようになった。
畑は何世代にも渡って彼の家族が所有し、当初は家族が苦労して造ったワインを地域の他の生産者の手に委ねていたのだが、その後アルフィオは、長い年月がかかる行程に着手し、その「最後の部分」も仕上げたのだった。「最後の部分」とは、つまり自分の資金でワインを瓶詰めし、商品化することだった。
今日のヴァルテッリーナはイタリアのワイン生産の展望において、とても重要な現実を示している。この地では、ネッビオーロはキアヴェンナスカ、つまり「山のネッビオーロ」と呼ばれ、非常に品質の高いワインが生産されている。
ヴァルテッリーナには地理学上の特異性があり、その地質と気候がこの土地をユニークなものとしている。
▲岩の脚の部分。段々畑のベースとなる。
ブドウの畑は文字通り山に作られることが多く、急な岩の斜面を、石の壁を造って支え、谷から土を運んで岩肌を覆い、段々畑を作り上げた。
それは何十年に渡る仕事の成果で、信じられないくらい複雑で難しいものだ。そこは、西から東へと広がる数少ないアルプスの渓谷のひとつである。
南向きの起伏に富んだ山の斜面は陽の光を最大限に浴びることができ、太陽は、日の出から日の入りまで、そこを照らす。よって、同じ緯度の他のヨーロッパやイタリアの地域と比べると、はるかに高い気温に達する。
▲オプンツィア。ブドウの木の間のウチワサボテンの一種
その証としてオプンツィアがある。ウチワサボテンの一種で、ここに自生の適性を見出した。岩がより多く気温が高い段々畑で見ることができる。
そして、実際に、上側では、ブドウの木の列の真ん中にひょっこり顔をだした岩の露頭に、小さなオプンツィアの羽根がついており、それらの先端には小さくてカラフルなウチワサボテンがついている。
それはシチリアのウチワサボテンの情景を思い起こさせるのだ。その背後には海、そして、乾いた小さな壁の上に、コッポラをかぶって、マランツァーノを手にしたシチリア人が座っている、という情景を。
*コッポラ:シチリアの農民の被るベレー帽 *マランツァーノ:シチリアの楽器
▲アルフィオ・モッツィ氏
一方で、ここにいるアルフィオは、彼もまた、ちょっとだけ、あの寡黙で慎み深い、そう、あの、伝えたい大切なことがあるときだけ口を開く、シチリア人を思わせるのだ。
10年以上前から畑には肥料を施していない。そして、ブドウの木が、今まで以上に葉、花、実を豊かにつけることがわかったので、約10年間、除草剤の使用もやめている。
発酵は自然酵母(土着の)によって自発的に始まり、ステンレス製タンクとファイバーガラス製タンク に移され、約3週間ルモンタージュを施す。マロラクティック発酵も翌年の春に自然に発生する。年間の生産量は約15,000本だ。
▲エンツォ氏。ワイン畑にて。
アルフィオ・モッツィのスタイル
試飲を始める前に、アルフィオ・モッツィのワインのスタイルについて、一言お伝えしたい。特にスフォルツァートについて。
彼のワインは、彼自身のように、けがれなく、几帳面(厳格で)で、きれいで(クリーンで)、本物だ。それは、厳格なエレガンスのライン上にあり、そのエレガンスは、かぐわしく、熟れすぎていないが力強いフルーツの香り、そして、スパイス、酸、白粉やタルカムパウダーのような軽さをもったタンニンの上に、遊ぶように漂う。
スフォルツァートに関して、アルフィオは他のワイナリーが造っているような、口あたりがソフトで、派手さのある、もしくはリッチな、流行りのスタイルのスフォルツァートは造らない。
卓越したエレガンス、バランス、瑞々しさは、このブドウ品種の持つ強さを奪わず、しかし、常にダイナミックな一口で、それらを高め、決して単調にならず、常に満足感を与えてくれるのだ。
▲アルフィオ氏の造る3つのワイン
では、アルフィオ・モッツィの造る3つのワインを飲んでみよう。
Sassella “Grisone” Valtellina Superiore Docg 2017
瑞々しさとエレガントさが、黒胡椒とチェリーの承認を得て出会う時。タンニンは酸とともに、ワインをジューシーに、うっとりするような魅力的なものにする。素晴らしく美しいワインだ。
それでいて、これが、彼のワインの中で「格下」なのだ。かなり立派な名刺だ。輝いている。
Sassella “Grisone” Riserva Valtellina Superiore Docg 2017
赤い実の詰まった小さなカゴが目の前にあると想像してほしい。ブラックベリー, 西洋スグリ(グーズベリー), フランボワーズ、チェリーも入っている。そして同じカゴに、王冠のように赤い実をぐるっと囲む、黒胡椒や、キナノキの樹皮、シナモン、カンゾウなどのスパイスが入っているのだ。そして、アニスとユーカリのキャンディーがこのカゴを完成させる。
今度は、鼻をカゴに近づけてみよう。もうちょっと、近くに、そして、そう、これだ。これこそが、このワインのグラスをかいだ時に感じるものだ。口の中はとてもエレガントで、調和がとれていて、複雑かつバランスがよく、わずかに風味がある。
フィニッシュにはバルサミコ酢と軽いほろ苦さ。 それらはワインに長い長い余韻を与える。食欲をそそって美味しそうだ。
▲スフォルツァート ディ ヴァルテッリーナ DOCG 2016
Sforzato di Valtellina Docg 2016
スフォルツァートに使用されるブドウは、3ヶ月間果実庫で寝かし、乾燥させて、風味を凝縮させる。圧搾と自然発酵の後、ワインは木製の大樽で2年間熟成する。
グラスの中で、非常に美しいルビーレッドをしており、とても明るく、鼻に感じるのは何よりもまず、熟したプラム、アマレーナ(ブラックチェリー)、枯れた赤い花、胡椒、ジュニパーとバルサミコ酢、メントールだ。
口の中は力強く、包み込まれるが、エレガントで、ミネラル感があり、瑞々しいままだ。カカオとタバコの香り、きめ細かくよく溶け込んだタンニン、筋肉質でありながら、素晴らしく緻密なきめ(フィネス)と上品な気高さを持ったボディだ。
ビットチーズとピッツォッケリ、ブレザオラとはとても相性が良く、まるで、完全な共存関係において自然に補完される食材で、ワイン自身がそれらを呼び寄せてしまうようだ。緻密で、非常にクリーン、そして決して優雅さからはみ出ることのないワイン。素晴らしい。
Evoè! *エヴォーエ:バッカスに敬意を表して、彼の巫女であるバッケが歓喜を表現する言葉
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ヴァルテッリーナのユニークさ、アルフィオさんの誠実さ、ワインの美しさを感じていただければ嬉しいです!あなたもぜひ一度飲んでみてください♪
【関連ページ】
▶オットーネ通信(第5回)ヴァルテッリーナの土地と自然を誠実に表現 アルフィオ・モッツィ社グリーゾネ
▶オットーネ通信(第14回)貧しき農民のワインから至高のワインへ…ヴァルテッリーナのスフォルツァート
▶オットーネ通信(第20回)荘厳なヴァルテッリーナ渓谷の品格が宿るグリーゾネ・リゼルヴァ
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